3-5. クロマチンとエピジェネティクス
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真核生物のゲノムDNAはクロマチンとよばれるDNA-タンパク質複合体として存在し、転写の制御もクロマチンを基盤としてなされる
1) ヌクレオソームとヒストン
ヒストン
クロマチンの基本構造を構成する主要タンパク質
塩基性タンパク質で4種類(コアヒストン)
H2A, H2B, H3, H4
ヌクレオソーム
コアヒストンのそれぞれが2個、計8個がまとまり、それを芯としてその周囲をDNAが約2回巻き付いた数珠状構造
約200塩基対に1個の割合で作られる
ヒストンにはこのような標準的な分子以外のもの(ヒストンバリアント)も存在する
2) クロマチンの修飾とエピジェネティクス
クロマチンの構成要素はDNAとヒストン、そして少量の非ヒストンタンパク質(e.g. 転写因子)やある種のncRNA
クロマチンが転写制御因子の結合や機能発現に影響するため、結果的にクロマチン構造は転写効率に影響する
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エピジェネティクス(epigenetics, 後成的遺伝, あるいはその研究分野)
塩基配列によらない遺伝
クロマチンを基盤とする転写調節が細胞分裂後も長期にわたって持続され、結果的に遺伝現象が支配される場合がある
エピジェネティックな修飾は転写制御領域に多くみられる
エピジェネティクスの主な原因として、DNA中の塩基とヒストンの化学修飾がある
塩基修飾の中心はシトシンの5位のメチル化で、とりわけプロモーター付近に密集して存在する5'-CG配列(CpGアイランド)中のCがメチル化されて転写が抑制される例が多く知られている
エピゲノム
塩基配列の観点から捉える染色体DNA全体をゲノムというのに対し、クロマチン修飾の観点から捉える染色体DNA全体
エピゲノムの修飾パターンは細胞の分化やがん化などによって変化しうる
ヒストンコード
ヒストンN末端尾部のもつ化学修飾パターン
ヒストンの化学修飾は主にN末端(アミノ末端)尾部に集中するが、それにはアセチル化、メチル化などがある
エピジェネティックな効果はこのほかヌクレオソームの位置の変化やクロマチンに結合するncRNA(e.g. X染色体がXist RNAによって抑制される)、ヒストンバリアントによっても現れる
Column ゲノム刷り込み:ゲノムインプリンティング
ある特定の遺伝子の働き方が、その遺伝子が精子由来か卵由来かで異なるという現象がある
この現象は遺伝子にその発現調節領域も含めて何らかの目印(マーク)がつけられているために起こる
ゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)
遺伝子にマークをつける機構
インプリンティングの本質はエピジェネティックな修飾であり、その主な分子機構はDNAのメチル化である
インプリンティングがあると対立遺伝子の一方のみが発現する
インプリンティングのパターンは生涯を通じて維持されるが、生殖系列細胞ではいったん消去され、各世代ごとに新生される
遺伝の中には「父親似」「母親似」という減少があるが、この現象もゲノムインプリンティングに関連があるかもしれない